AIの最先端・アメリカで見えてきた「これから必要とされる人」の姿 ―広島の私学6年間が持つ意味―

9月に入り、学校説明会や文化祭の案内が届く季節になりました。その一方で、ニュースでは「AIが仕事を奪う」という話題をよく目にします。わが子が社会に出るころ、どんな力が求められるのか。気になっている保護者の方も多いのではないでしょうか。AI開発の先頭を走るアメリカで、その答えが少しずつデータとして見えてきています。

アメリカで起きている「入口」の変化

スタンフォード大学の研究所が今年8月に発表した分析があります。AIの影響を受けやすい職種で働く22〜25歳の雇用は、影響の少ない職種の同世代と比べて約19%低い水準にとどまっています。一方で、経験を積んだ働き手には同じような差は見られませんでした。

ダラス連邦準備銀行はこれを次のように説明しています。AIは教科書に書ける知識(形式知)は再現できますが、経験から身につく知恵(暗黙知)は再現できません。「知っている」だけでは差がつきにくくなり、「経験から判断できる」人の価値が高まっている、ということです。なお、社会全体で大規模な失業が起きているわけではない点も添えておきます。

求められているのは「AIスキル」より「考えて伝える力」

約1,500人の経営者に「若手に求める力」を尋ねた調査では、最も重視されたのが「批判的思考」と「コミュニケーション」でした。「AIの知識」は項目の中で最も低い評価でした。ハーバード大学の研究でも、人と協働する力が求められる仕事ほど伸びていて、考える力とかけ合わせることで価値が高まると示されています。

中学受験の勉強は、初めて見る問題に手を動かして挑み、途中式や記述で自分の考えを言葉にすることの繰り返しです。教室で仲間と刺激し合いながら取り組む日々は、まさにこの「考えて、伝える」力の土台づくりといえます。

広島の私学に根づく「AIにはまねできない学び」

もうひとつ興味深い研究があります。AIが新人の仕事を代わりにこなすようになると、熟練者から新人へ技が受け継がれる機会が減り、長い目で見ると社会の成長を鈍らせる可能性がある、という指摘です。教科書に書けない知恵は、人から人へ、同じ場を共有する中で伝わっていくものなのです。

広島の私学を見渡すと、こうした学びをそれぞれの色で大切にしてきた学校が多いことに気づきます。

経験から学び、自分で判断する力

修道は「自治の精神」を掲げ、校則で細かく縛らず、学年が上がるほど生徒に任される範囲を広げていく校風です。広島国際学院の体験プログラム「百戦錬磨」では、夏のキャンプや田植え、泥んこになって競い合う行事など、教室の外での体験を重ねます。広島なぎさの職業体験「仕事Watching」は、2か月の事前調査から体験、そして約1か月半かけた発表準備までをやり切るプログラムです。

考えて、伝える力

ノートルダム清心は電子図書館の利用率が全国1位(2022年度)になるほど、読み、調べる文化が根づいています。広島女学院では中学1年から高校3年まで平和学習を続け、アメリカやアジアの視点も含めて多角的に考えます。安田女子は中学から「探究の時間」を設け、デザイン思考やものづくりに取り組み、探究発表会で自分の言葉で発表します。

人と協働し、受け継いでいく力

広島学院では「経験→振り返り→実践→評価」のサイクルで学ぶ独自のプログラムがあり、学年を越えて先輩と後輩が同じ部活で活動します。アメリカの研究が重視する「経験を知恵に変える」過程と「技の受け継ぎ」そのものです。広島城北は「英才・道徳・錬身」を掲げ、礼儀を重んじる校風の中で、多くの行事を通して協調性やリーダーシップを磨きます。ノートルダム清心でも、生徒会が中心となって行事を企画・運営しています。

どの学校が上ということではありません。わが子の性格に合う「色」の中で6年間を過ごすことで、こうした力が育ちやすくなります。公立でも同じ経験はできるのでは、と思われるかもしれません。もちろんそうです。ただ、長年積み重ねられた校風と、6年間という途切れない時間があることで、縦のつながりが濃く育ちやすい傾向があります。

秋の学校見学で、ぜひ見てほしいところ

文化祭や説明会では、進学実績だけでなく、先輩が後輩にどう接しているか、生徒が自分の言葉で学校を語れるかにも目を向けてみてください。その学校で6年間を過ごしたわが子の姿が、きっと思い浮かぶはずです。

中学受験はゴールではなく、「経験から学び、人と考え、言葉にできる人」へ育っていく入口です。この秋の一歩を、親子で前向きに踏み出していきましょう。