親の「ご機嫌」が、子どものパフォーマンスを左右する ― 入試本番までの半年を支えるために

これまでこの連載では、お子さま自身の心の整え方についてお話ししてきました。今日は少し視点を変えて、見守る側――保護者の皆さまご自身の「心の状態」について考えてみたいと思います。実は、この夏から始まる半年のお子さまの伸びを大きく左右するのは、親御さんの「ご機嫌」かもしれません。

子どもは「親の機嫌」に敏感です

ご家庭の空気が張りつめているとき、お子さまはそれを驚くほど正確に感じ取っています。親が不機嫌だと、子どもは知らず知らずのうちに萎縮し、「怒られないように」勉強するようになります。これでは、机に向かう時間(量)は確保できても、頭が働く状態(質)にはなりません。逆に、家庭がご機嫌な空気で満たされていると、子どもは安心して集中でき、難しい問題にも臆せず挑戦できます。同じ一時間でも、中身がまるで違ってくるのです。

辻秀一氏が説く「ご機嫌」という心の状態

スポーツドクターの辻秀一氏は、応用スポーツ心理学をもとに、人が最も力を発揮できる「フロー」という心の状態を提唱しています。その入り口にあるのが「ご機嫌」――「揺らがず、とらわれず」の落ち着いた心です。

辻氏によれば、不機嫌なときの脳は視野が狭くなり、集中力も切り替えの早さも失われてしまいます。これは試合に臨む選手だけの話ではありません。家庭という「場」の空気をつくっているのは、ほかでもない保護者の皆さまです。親がご機嫌でいることそのものが、お子さまがフローに入るための土台になるのです。

この夏、いちばん試されるのは親かもしれません

私自身の経験で恐縮ですが、夏休みは一日が長く、お子さまと顔を合わせる時間がぐっと増えます。わが家でも、子どもはちゃんと勉強しているはずなのに、つい、だらだらと過ごしている時間のほうが目についてしまい、気づけば不機嫌になっている――そんなことが何度もありました。長く一緒にいるからこそ、できていない部分にばかり目がいってしまうのです。

もし家庭の空気が張りつめてしまいそうなとき、心の安定にご不安を感じるときは、どうかご家庭だけで抱え込まないでください。塾の自習室を頼っていただいてかまいません。授業のない時間や曜日でも、自習に来ていただけます。少し距離をとって過ごすことが、お子さまにとっても親御さんにとっても、心の安定につながることがあります。

これからの半年が「攻防」になる理由

夏が明け、9月を過ぎると模試の回数が一気に増えてきます。偏差値や判定という数字が、これまで以上にはっきりと突きつけられる時期です。ここで親御さんが結果に一喜一憂し、不機嫌になってしまうと、お子さまのパフォーマンスは劇的に下がりかねません。

修道、広島学院、ノートルダム清心といった志望校を目指す道のりの中で、最も問われるのは、実はお子さまの学力以上に、親御さんの「心の置きどころ」かもしれません。結果が出ない日こそ、家庭が安心できる場所であり続けることが、次の一歩につながります。

親が「ご機嫌」でいるために

とはいえ、いつも完璧にご機嫌でいる必要はありません。大切なのは、模試の結果と自分の機嫌を切り離す意識を持つことです。点数を見て言葉を発する前に、ひと呼吸おく。「ここまでよく頑張ってきたね」と、まず過程に目を向ける。親御さん自身が、好きな時間や息抜きを持って心を整えておく。そんな小さな工夫の積み重ねが、家庭の空気を変えていきます。

そして、どうか気負わないでください。完璧な親はいません。親もまた、お子さまと一緒に悩み、つまずきながら、少しずつ成長していく存在なのですから。

おわりに

親のご機嫌は、お子さまへの何よりのサポートです。この夏からの半年、お子さまに「頑張りなさい」と声をかける前に、まずは大人である私たちが、自分の心を機嫌よく整えていく。そうして親子で一緒に成長していく姿勢こそが、いちばん近くで支える親にできる、最も確かな応援だと思います。