非認知能力を高めるうえでどのような習い事が有効?

これは一筋縄ではいかんな・・・

1)非認知能力とは

 認知能力とは、IQに代表されるような、テストなどで数値化できる知的能力のことです。
 それに対して非認知能力とは、認知能力以外の数値化できない能力のことをいいます。
 最近よく耳にするようになってきました。
 
 意欲、協調性、粘り強さ、忍耐力、計画性、自制心、創造性、コミュニケーション能力といった、測定できない個人の特性による能力全般のことを指し、また将来的に人生を豊かにする力とも言われています。
 非認知能力が高い子どもは、ものごとに前向きに取り組むことができるようになります。
 壁にぶつかっても諦めない、失敗から学べる、問題解決のために自ら動くことができる、そういう人間になります。

 2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンが、幼児教育と非認知能力の重要性を指摘しました。
 幼児期から学童期にかけてどのような取り組みをするかで、非認知能力を獲得する量は変わってきて、将来の社会的成功を予測することができるようになると言われています。


2)非認知能力と習い事

 幼児期から学童期に非認知能力を高めるためによく用いられるのが習い事です。
 昔から人気の習い事といえば水泳やピアノ、書道などが上位に並びます。
 最近は英会話やプログラミングを、小学校での授業に備えて先に学ばせておきたいという親も多いようです。
 そのほか、野球やサッカーなどのスポーツ教室もあります。

 非認知能力という観点から習い事を選ぶ場合、何が有効なのか。
 一般的には非認知能力を高めるために必要な要素として「結果よりプロセス」「手足を動かす」「コミュニケーションを含む」と言われています。

 いくつか例を挙げてみます。
 ・水泳
   身体を動かすことはもちろん、昔からある習い事なので成長するためのステップが確立されています。
   そのステップを順にクリアしていくため、成功体験として感じやすく、自己肯定感も得られます。

 ・楽器
   音楽に触れることは情操教育にいいと言われていますし、指先をたくさん動かすこと、先生とのコミュニケーションなども必要です。
   教室によってはコンクールへの参加などがあるかもしれませんが、基本的には自分のペースで成長することができます。

 ・プログラミング
   創造力や粘り強さも必要な習い事です。
   画面上の文字だけではなくブロックを組み立てるようなタイプのプログラミングもあります。
   手先を動かし、想像力や創造力を働かせながら試行錯誤することで非認知能力は育まれます。

 プログラミング教室や理科実験教室に代表されるような教育系の習い事は、認知能力を高める勉強でもあり、非認知能力を高めることに適した習い事でもあります。
 もちろん子ども自身がプログラミングなり理科実験なりに興味をもって、より深く知りたいという思いをもっていることが前提となります。


3)非認知能力を高めるために大事なこと

 子どもの「非認知能力」をより高めたい。
 一般的には先述した通り「結果よりプロセス」「手足を動かす」「コミュニケーションを含む」となっていますが、2020年の研究論文では、幼少期の「自然体験」「地域体験」「習い事の継続年数」が非認知能力と相関関係をもっていることが明らかにされています。

 ・「自然体験」「地域体験」
   この2点は、地域のイベントなどに参加したり、家族で出かけた時などに得られる経験です。
   習い事でいえば、ボーイスカウトが当てはまる数少ないものでしょう
   旅行会社などで、野外体験をテーマに、近隣の海や山、研究施設を目的地にした子ども向けのツアーが企画されていることがあります。
   そういうものに参加してみることで、様々な経験を得ることができるでしょう。

 ・「習い事の継続年数」
  「何をやるか」よりも、「長く続けること」が重要であるということ。
   親が強制するのではなく子供自身がやりたいと思うものを選びましょう。
   運動が苦手だから少しでも良くなるようにやらせてみよう、みたいな考え方はあまり良くありません。
   続けるだけでも一つの成功体験ですし、逆に習い事をやめる=失敗体験になってしまいます。
   嫌ならやめればいいというわけではなく、最初から子どもの意見を聞いて吟味した上で始める方がよいでしょう。
 
 旅行、地域のイベント、お祭りでも何でもいいので、日ごろから様々な体験活動に足を運んでみる。
 それに加えて、「これ」と決めた習い事については楽しみながら長く続ける。  
 コンクールや昇級を目指していくような習い事で成功体験を積み上げることもできますが、そこには同時に壁となってしまうリスクもあります。
 非認知能力の観点から言えば、自分のペースで成長できるということを最も重要視した方がよいでしょう。


4)学習塾と非認知能力

 少し目線を変えてみて、習い事の中でも学力向上に特化されている学習塾について考えてみます。
 学習塾に入るのは、幼少期ではなく、早くても小学3・4年の学童期になります。
 最初に、まさに非認知能力とは学力(認知能力)の対局にあるということを書きました。
 もちろん学習塾は基本的には学力を身に着けることにより、テストの点数や偏差値という認知能力を伸ばすための場です。
 とはいえ、受験まで「やりぬく力」であったり、特に個別指導ではなく集団指導の塾の場合は、社会的スキルの養成にも役立ちます。
 同じ目標をもって共に学ぶ仲間であり、限られた合格という椅子を争うことになるライバルでもある、そういう複雑な関係をもつ人たちと時間を共にします。
 講師との関係も含めて、居心地が悪い塾では長続きしません。

 前向きに勉強に取り組み、テストでいい点がとれるということは
 ・自制心や計画性をもって勉強に取り組んでいる
 ・難しい問題にぶつかっても諦めずに粘り強く考えられている
 ・理解できないところは先生とのコミュニケーションによって解決できている
 ・友達と切磋琢磨しながら成長できている

 学習塾も非認知能力を伸ばすことに向いていないということは全くありません。
 学力の向上を自覚し始めた時、同時に非認知能力も高まっているはずです。
 ただ受験という明確な目標がある場合は、「結果よりプロセス」とどう折り合いをつけるかが一つの課題になります。

 幼児期は非認知能力、受験が近づいたら認知能力、というようにきっちり時期を分けて成長させられるような簡単なものではありません。
 認知能力と非認知能力を両輪としてバランスよく成長させていくのが理想的だと思いますので、そういう意味では学習塾も一つの選択肢になるかもしれません。